Japan Society for Madagascar Studies / Fikambanana Japoney ho an'ny Fikarohana momba an'i Madagasikara
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「マダガスカル島の白亜紀」−1億年前の海と陸−

蟹江康光 (横須賀市自然人文博物館)

 蟹江の調査は,1973年から始まった。以後1975年,間をおいて1994年,そして最近では,島を毎年調査を行ってきた。1973年と1975年の調査は,白亜紀のアンモナイトと恐竜の調査である。島の基盤をつくっているのは,太古の片麻岩類と花こう岩であり,やがて基盤をつくっていたゴンドワナ大陸は分裂して割れ目に海成層が堆積するようになった。白亜紀の海成層は,島の西側に帯状に分布している。しかし,白亜紀の終わりまではアフリカとの間の陸橋をわたってきた恐竜などが生息することができた。ここでは,調査を行った南西部地方について紹介する。解説の都合上,海成層の基盤から紹介する。

島の基盤岩 30億〜10億年前 -ゴンドワナ大陸の盾状地をつくる片麻岩

 太古の堆積岩の変成岩である片麻岩類は,主に島の中央部に露出し,標高1000 m以上の高原をつくっている。この片麻岩は,島の南部の延長で30.2億年前のRb-Sr年代値が測定されているが,さらに古い年代も知られている。

8〜5.5億年前 -片麻岩を貫いた花こう岩

 大きな地殻変動は8億〜5.5億年前にあった。花こう岩類が片麻岩類をつらぬく事変があった。地質図に示されているように各地で南北方向に花こう岩の分布している。サファイア・トルマリンなど宝石鉱物を含むペグマタイト鉱脈ができたのは,この時期である。

2.5億年前 -ゴンドワナ大陸の分裂

 古生代末期のペルム紀にゴンドワナ大陸分裂の最初に堆積した地層はサクアSakoa層と呼ばれている。その後に堆積したのは,サカメナSakamena 層で,中生代最初の2.6億年前である。それより新しい地層はイサロIsalo層と呼ばれ,それぞれ古期から新期にかけてI・II・III層に分けられている。イサロ国立公園の丘陵をつくっているのはかっての湖に堆積したイサロI 層である。イサロのサファイア鉱床はイサロI層にある。

約2億年前 -ゴンドワナ時代の終了と海成層の形成

 中央高地をつくる花こう岩を含む片麻岩の大地は隆起を続け,山地となった。湖を埋めたイサロIII層の堆積をもって1.5億年前(ジュラ紀中期)にゴンドワナの時代は終了した。山が高くなると,低地には海水が侵入するようになった。ジュラ紀中期の海成層はサカラハ地方で南北の石灰岩からなる台地をつくっている。メナベ北のベマハラにある世界遺産,石灰岩台地もこの時代の産物である。

白亜紀 9000万〜7000万年前 -メナベの白亜紀アンモナイト

 メナベ地方は,島の南西部でモザンビーク海峡に面する地域である。ここへ行くにはムルンダバから「バオバブ街道」を北上すると,ツィリビナ川の下流に到着し,渡し船をへて70 km行くとアンチャクアザトー集落に到着する。南西部地方は,乾期(4〜10月)に全く雨の降らない乾燥地となるので,地質調査や化石収集に適している。 1950年代にフランスの軍人であったコリンニョンは軍隊を動員してアンモナイトの調査をし,10万分の1地質図幅をも完成させた。退役後,アンモナイトのモノグラフを地質調査所(Service geologique)から刊行し,出版物の厚さは将軍の背の高さに達したと言われている。蟹江は当地を1973・1975・1994年に調査した。ここの化石は灼熱のアンモナイトという言葉がぴったりで,おびただしい化石からなる石ころが,見渡す限りの灼熱の大地にころがっていた。調査は,白亜紀後期から白亜紀末期のアンモナイト・オウムガイ類やイノセラムス科二枚貝の化石で,時代ごと,連続的に採集できた。調査の結果,この地に限られて生息していたシュードシュローエンバキアというアンモナイトがすんでいた海は,南方に開いていた湾と考えられた。約9000万年前には,大量の玄武岩の流出が島の各所であり,インド洋底の火山活動に呼応している。

8300万〜7400万年前 -マジュンガの白亜紀恐竜

 マジュンガは,マダガスカル語でマハジャンガと呼ばれるようになり,モザンビーク海峡に面する港町で,日本とは高級クルマエビの輸入でつながっている。マハジャンガの南東約100 km付近には,ジュラ紀中期(約1.7億年前)に南アフリカから渡ってきた大型肉食恐竜・ボスリオスポンディルスが見つかっており,アンタナナリブのツィンバザザ博物館に展示されている。首都からマハジャンガに達する道路工事中にベリブトラ集落で恐竜などの化石が発見された。これらの化石は,約7000万年前のものである。調査で,それらは,かつての大きな湖の主であった草食恐竜,それを餌とする肉食恐竜また陸亀やワニ・ヘビの化石で,いまも堅頭竜など,珍しい化石が続々と見つかっており,NatureやScienceなど科学雑誌の表紙を飾っている。

付編・ミネラル

 マダガスカル島は,また宝石鉱物の世界有数の産地である。前述のように,島の中央高地は,ゴンドワナ大陸の中核(楯状地)をなす35億〜10億年以上前につくられた片麻岩と,それをつらぬく花こう岩からなる。これらの岩石にはペグマタイト鉱物が含まれ,クオーツ(水晶,鉄石英,紫水晶)・ローズクオーツ(紅石英)・黒雲母・ベリル・ガーネット・トゥルマリン(電気石)・ルビー・サファイア・などは巨晶で色も美しく,世界的に有名である。アンチラベ〜アンブシトラの山地には各種の鉱山がある。

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