Japan Society for Madagascar Studies / Fikambanana Japoney ho an'ny Fikarohana momba an'i Madagasikara
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目次

会へのお誘い

このたび、マダガスカル研究にたずさわる研究者が中心となって、「マダガスカル研究懇談会」が設立されることになりました。しかしこの会は、研究の発展と研究者の交流を目的とするものでありながら、研究者以外の人びとにも開かれています。私自身、研究というよりはむしろ外交の面でマダガスカルと関わって参りましたが、この国独特の魅力に強く惹かれ、常にこの国への関心を寄せ続けている者でございます。この会が発足するにあたり、日本におけるマダガスカル研究が発展することに期待し、他の研究者のかたがたと共にこの会の発起人となることをお引き受けいたしました。

マダガスカル島は、ゴンドワナ大陸から分かれて以来、ユニークな生物種が進化してきており、生物学的に特異な地域であると言えます。同時に、人々の暮らしには東南アジア・アラビア・アフリカの各文化要素が取り入れられており、民族学的にも特異であります。おそらく、「アフリカに一番近いアジアの国」には、われわれの知らない特異性がまだまだたくさんあることでしょう。すこしでも多くのかたがたがこの会に参加してくだされば、マダガスカルに対する日本の理解もいっそう充実したものになることと思います。それぞれの立場からマダガスカルへの理解を深めるためにも、ぜひこの会に参加していただきますようお誘い申し上げます。

1999年1月  発起人代表 山口洋一(元・在マダガスカル日本大使)

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会の設立趣意

私たちの生きる現代は、「グローバル化」あるいは「ボーダーレス化」の時代といわれます。私たちの生活にまったく関係ないと思われていた国々と日本との間には、計り知れない量の人・モノ・情報が行き交っています。その結果、わたしたちは知らず知らずのうちに遠くの国々と多くの現実を共有するようになっているのです。

その一方で、地域に対する理解の重要性も同時に叫ばれています。この動きはグローバル化の動きと対立しているように見えますが、両者はむしろ密接に関わり合っています。地域に対する理解が進んで情報が蓄積されれば、その地域の美点を利用したり欠点を改善したりする目的で、人やモノの流れが生じるからです。また、人やモノが移動した結果、その地域に関する情報量はますます多くなります。つまり、地域に関する情報は、グローバル化時代にあって大きな社会的役割を果たしていると言えましょう。

さて、私たちは今回、マダガスカル研究に関する新しい集まりを呼びかけることになりました。そのもっとも大きな理由は、グローバル化のますます加速するであろう21世紀を前にして、自分たちの蓄積してきた「地域に関する情報」の意味を再確認するためです。私たちの多くは研究者ですが、それぞれの専門分野を越えてマダガスカル地域に対する知識と理解を深めたいと思っています。そのことにより、「私たちはなぜマダガスカルで研究をおこなってきたか」が明確になり、研究によって蓄積されてきた情報の意味を問い直すことができると思うからです。

それと同時に、私たちは、自分たちの研究成果が他の人びとにとって思いがけない意味を持つことも予想しています。そこで、自分たちの研究成果の可能性を問うために、広く研究者以外のかたがたにも、新しい集まりの扉を開くことにしました。研究者以外のかたがたには、最新のマダガスカル研究の成果にふれる場としてこの会を利用していただければ幸いです。そのように各人が立場に応じてこの会に参加していくことは、グローバル化時代の新たな展開を探ることにほかならないと私たちは信じています。

1999年1月   発起人一同

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発起人一覧

(敬称略、五十音順、**は発起人代表、*は世話役)

天野實(東京農業大学、細胞遺伝学・植物学)
ANDRIAMANANKASINA, Tantely(北海道大学、情報工学)
池上甲一(近畿大学、農業経済学)
今森光彦(写真家)
内堀基光(一橋大学、文化人類学)
江口和洋(九州大学、動物生態学)
甲斐光(柔道家)
川又由行(クインズランド大学、植物生理生態学)
黒川洋(麗澤大学、言語人類学)
黒田洋一郎(東京都神経科学研究所、神経毒性学・分子神経生物学)
小山直樹(京都大学、霊長類社会学)*
斉藤千映美(宮城教育大学、行動生態学)
崎山理(国立民族学博物館、言語人類学)
杉本星子(京都文教大学、文化人類学)
高谷好一(滋賀県立大学、地域研究)
立本成文(京都大学、文化人類学)
田中耕司(京都大学、作物学・熱帯農学)
近山雅人(写真家)
千代浦昌道(獨協大学、開発経済学)
中嶋暉躬(サントリー生物有機科学研究所、薬学)*
中道正之(大阪大学、霊長類学)
深澤秀夫(東京外国語大学AA研、社会人類学)*
藤沢等(関西大学、社会心理学)
堀内孝(写真家)
森岡弘之(国立科学博物館、鳥類学)
森山工(広島市立大学、文化人類学)
安元健(日本食品分析センター、魚介類毒研究)
山岸哲(京都大学、社会生態学)*
山口洋一(元マダガスカル大使)**
山崎和男(広島大学、薬学)
吉田彰(進化生物学研究所、植物学)*
吉本忍(国立民族学博物館、民族技術・民族美術)
RAZAFIARISON, Lalaina Zo(一橋大学、植物学)
RAMIARISON, Herinjatovo(明治大学、国際経済学)
RANDRIAMAHAZO, Herilala(京都大学、動物学)

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巻頭言(会報第1号より)

山岸哲(京都大学理学研究科、本会世話役代表)

マダガスカル研究懇談会が発足した。「こんな会があったらいいなー」とアンタナナリブで深沢さんや森山さんと話し始めてから5年ほどが経過した。早かったというべきか、遅すぎたというべきか。私は「ちょうどいいくらいの発足時期だったな」と思っている。お集まりいただいた方々の多彩な顔触れを見るにつけ、これこそ今流行の「地域研究」のお手本のようなものではないかと、つい思ってしまう。

Edward W. Said (1993) は、地域研究という言葉について「醜い新造語」であるといった。その意味を矢野暢 (1993) は、「それが、まだ学的尊厳と正統性をもたないわりには大きな顔をしている」からだと受け止める一方、「植民地時代の帝国主義の罪深い過去の歴史の上に重なりかねないから」だとしている。そうだとすると、私たち日本人は、マダガスカルに関する限り、東南アジアに対するほどの帝国主義の贖罪意識はもっていないのではなかろうか。

そんな難しいことを考えなくても、この会の発足はきわめて自然発生的であり、かつ愛好者的集いでもある。「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるが、この会の会員が、まずは何よりマダガスカルという島をこなく愛していることがひしひしと伝わってきた発足総会であった。

この会が学者だけの集まりではなく、さまざまな分野の人々に支えられ、それらの人々の多様な視点でこの島を見つめ直すことによって、マダガスカルの新しい地域研究がさらに進むなら、この会を発足させた甲斐があるというものだ。

Edward W. Said, 1993. Culture and Imperialism, Knopf: New York.
矢野暢 1993. 「ファルマコンとしての地域研究」『総合的地域研究』創刊準備号.

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祝辞(会報第1号より)

山口洋一(元駐マダガスカル大使、本会発起人代表)

マダガスカル研究懇談会の発足を心からお慶び申し上げます。発足に向けての準備に携わってこられた関係各位の熱意に敬意を表するとともに、そのご努力を多とします。

かつては日本から遠く離れたこの島国に関心を向ける人は殆どおらず、日本にとってマダガスカルは疎遠な国でしたが、その後交通の便もよくなり、マスコミでも紹介されるようになるにつれ、この国を手がける研究者も増えて参り、我が国との関係が徐々に緊密になってきたのは喜ばしい限りです。

日本には世界の主要な国との間に「日本・○○協会」といった友好団体と「日本○○学会」といった学術団体がありますが、マダガスカルについては最近まで「協会」も「学会」も存在しない淋しい状況にありました。私がマダガスカル駐在の任にありました頃には、マダガスカル側には「マダガスカル・日本友好協会」があり、活発な活動をしているのに、日本サイドにはそれに見合った受け皿が存在しないという恥ずかしい状態でした。両国友好促進の体制造りでは、マダガスカルの方が先んじていた訳です。日本ではあまり知られておりませんが、実はこの国は隠れた親日国であり、こんなに遠く離れた国でありながら、日本に熱いまなざしを注いでいるマダガスカルの人たちが少なくないのです。言ってみれば、マダガスカル人の「片思い」といえる程の日本への思い入れが、このような体制づくりの差に現れていたのです。

こんなことではいけない、日本でも相応の体制をなんとか早急に整備すべきだということで、その後関係者が尽力し、1990年になってやっと日本にも「日本・マダガスカル協会」が設立されました。そして今般、研究懇談会が発足したことにより、行く行くは「学会」設立に繋がる足がかりができた訳でして、日本側の体制もようやく整って参りました。 この研究懇談会の発足が我が国におけるマダガスカル研究の一層の促進に繋がるとともに、両国間の友好親善及び学術交流・協力関係の一層の増進に寄与して行くことを願ってやみません。

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